高卒で国家公務員になるな!

元ノンキャリア役人が、意外に表に出てこないノンキャリアの実情やお仕事の話を。

高卒で国家公務員になるな!と全力で思う5つの理由。

チャンスは皆無、出世も給与も平等なようで格差だらけ。

今年、約15年の公務員生活にピリオドを打ちました。

おぼろげながらやりたいことが見えてきたというのが大きな理由でありつつ、実際にはお役所の内情を感じれば感じるほど、そこで時間を過ごすことが非常にバカバカしく感じてきたんですよね。

世間が持つ国家公務員のイメージとしたら「安定している」「親が安心する」「ネームバリューがある」「婚カツでモテモテ」といったものかと思います。確かに正解だらけなのですが、一方で見えない話もたくさんあるもので。

で、何よりも伝えたいのが「高卒で国家公務員になるな!」ということ。

東大や京大といった国立大学を卒業したエリートが、国家公務員Ⅰ種試験(現在は「総合職」試験)を経て入省すると良く耳にする「キャリア官僚」と呼ばれるのに対して、国家公務員Ⅱ・Ⅲ試験(現在は「一般職」試験)を経て入省すると「ノンキャリア」と呼ばれます。前者には官僚という言葉が付くのに対して、後者にはその単語すらつきません(笑)。

このノンキャリアという言葉、字面的にもキャリアパスがないような印象を与えますが、実際は…その通りです。よく、色々な省庁の採用パンフレットに「やりがいある」「幅広い業務に携わることができる」という言葉が並んでいますが、そんなことありません。

ありそうで、やっぱり存在するノンキャリア間の格差。

特に大きいのが、ノンキャリアの中における大卒と高卒の格差。言葉としては一括りなのですが、その間には高く分厚い壁が立ちはだかっています。(ただ、この壁は便利にできているので、時にくだらない理由で取り除かれることもありますが。)

理由は色々とあるのですが、主にこの5つです。

  1. 評価はいつまでたっても「仕事ができない大卒ノンキャリア>>>>仕事ができる高卒ノンキャリア」。
  2. で、お給料や出世も「仕事ができない大卒ノンキャリア>>>>>>>仕事ができる高卒ノンキャリア」。
  3. 「自分がやりたい事・やれる事」と「他人が思うあなたのやれる事」とのギャップが、結果を出していても大きすぎる。
  4. 事業や企画のプロにはなれず、雑用のプロにしかなれない。
  5. 限られた人脈を広げる機会と、限りなく不毛な業務量。

簡単に、それぞれの理由についてまとめてみると、

  • 評価はいつまでたっても「仕事ができない大卒ノンキャリア>>>>仕事ができる高卒ノンキャリア」。

 →採用試験が全てだからです、採用試験イズ、オール。そんな感じです。なので、ネットサーフィンという仕事や、喫煙所でたばこを吸うという大役を担っている大卒ノンキャリアの世話を、高卒ノンキャリアが尻拭いするなんてことも当たり前。

  • で、お給料や出世も「仕事ができない大卒ノンキャリア>>>>>>>仕事ができる高卒ノンキャリア」。

 →ノンキャリアの人事は、大卒ノンキャリアが握っています。また、役所には「級別定員」という「この課には、俸給表(お給料のランク表)がいくらいくらな人を何人配属させます」的な枠があるので、高卒ノンキャリアの評価を高めると、横並びが崩壊してしまい、人事が回せなくなってしまいます。

  • 「自分がやりたい事・やれる事」と「他人が思うあなたのやれる事」とのギャップが、結果を出していても大きすぎる。

→公務員になりたいという人は、大小ともなく何かしらの社会貢献意欲を持っているのですが(ただ、経験則として「自分の安定」といった食い扶持系の理由で、専門学校を経て国家公務員になっている人に、それは少ないものです)、そうした仕事のチャンスがなく日々を送る生活をしていると、段々と人間性が腐っていくものです。というか、総務系のワンチャンスで仕事の結果を出してしまうと、その系のチャンスしか回ってこないこととなり、本当にやりたいことがむしろ遠ざかってしまうということも。

  • 事業や企画のプロにはなれず、雑用のプロにしかなれない。

→ノンキャリアは、いわゆるキャリアパスというものが限られています。「企画」や「事業」、最近では「戦略的広報」といった種類のキャリアパスのカードがあるとしたら、社会貢献意欲はこのカードとセットで発揮されるもの。ですが、そのカードはキャリアしか持てないものだったりします。つまり、携わる機会が少ないんですよね。それゆえ、こうした場面を通じて「ノンキャリアが出る杭が伸びるシステム」が皆無なので、結局残った仕事カードは雑用系になってしまうと。もちろん、その中で専門性を高めたいという人もいますが、入って数年でそのポジショニングを固めるという人なんて、そんなにいません。

  • 限られた人脈を広げる機会と、限りなく不毛な業務量。

→よく「仕事のための仕事」という言葉がありますが、国機関の場合は「仕事のための仕事のための仕事のための仕事」といった具合に、不毛なレイヤーだけが豊富に揃っています(笑)。なので、先のヒエラルキー的なものから生まれる結果として、ノンキャリアには不毛な業務だけが妙に重るものです。しかも、ここでラインの偉い立場たる大卒ノンキャリアがダメダメだと、高卒ノンキャリアにのしかかってしまいます。また、不毛な業務量がのしかかって、自己啓発の時間も作れません。これが民間企業だと学歴問わず人脈を持っていると重宝されるものですが、ノンキャリアの場においては、それは重宝ではなく重荷と扱われてしまうものです。

 今の公務員制度の問題は「天下り」や「キャリア優遇」といった面がクローズアップされていますが、一方で実はこうしたノンキャリアセクタに渦巻く問題は、あまり表立ってないものです。

 このブログでは、こうした実情やノンキャリアのお仕事について色々と綴っていこうかと思います。